皆さんノーベル賞はご存じですね。
では、ノーベル賞の選考に先立ち発表される〝イグ・ノーベル賞〟はご存じですか。
1991年創設の「人々を笑わせ、そして考えさせてくれる研究」に対する賞で、"裏ノーベル賞"とも呼ばれています。
ノーベルに否定的な接頭辞「Ig」をつけ、「下等な、下品な、見下げた」という意味の英単語「ignoble」を掛けたジョークを含んだ造語です。
この賞は日本人研究者も多く受賞し代表的なところでは、1997年たまごっちの開発者が「膨大な労働時間をバーチャルペットの飼育時間に費やさせた」として経済学賞を、2004年カラオケを考案者が「お互いの曲をじっと聞くような、忍耐強さを鍛える新しい方法を編み出した」として平和賞を受賞しています。
今年は9月16日に開催され、千葉工業大学のチームが工学賞を受賞し日本人研究者の受賞は16年連続です。
研究テーマは、なにやら難しそうな概念の「円柱形つまみの回転操作における指の使用本数について」です。
簡単に解説すると、つまみ、水栓、ふた、ドアノブなど回転操作する機器で、〝何本の指をどこの位置に置いて回すか〟という無意識な操作をグラフや数式で示しつまみの大きさや形状のデザインに役立てようとする研究です。
授賞式でのエピソードがとても俊逸なので御紹介します。
受賞者が質問に答えた一説に「鼻をつまむとき何で無意識に二本の指を使うのかを解き明かすのが私たちの研究です」とありました。
もちろん、鼻は回すものではありませんが〝無意識の行為〟は、人間工学では大変研究されています。
身近なものでは、最近よく見かける3wayバック(手持ち、片肩掛け、両肩掛け)では荷物が何キロ以上になったらと使用形態が変化するのか」などです。
身体のバランスへの影響を数値化し転倒防止などに役立つと考えられています。医療・介護の世界でも移乗など様々な状況で〝無意識の行為〟がありそうですので一度改めて注目していきたいと思います。
〝無意識の行為〟は、決して「Ig」(否定的な接頭辞)ではないのです。